私は「たり」があまり好きではなく、ほとんど使用しないのですが、たまに「たり」を単独で使用すると、「『~たり』は必ず組み合わせて使用してください」と指摘を受けることがあります。
私の推測が間違っていなければ、おそらく、Microsoft Word の校正機能に多くの方が毒されています。この校正機能を誰が監修したのかは知りませんが、すべてにあてはまるものではないと以前から感じていたため、この記事を書きました。
「~たり」を組み合わせて使用することが推奨されるのは、同種の動作、関連のある動作、反対の動作の繰り返しであり、次のような例があると思います。
○ サンドバッグを殴ったり蹴ったり (同種の動作)
○ 見たり聞いたりして調べる (関連のある動作)
○ 右手を上げたり下げたり (反対の動作の繰り返し)
したがって、次のような文章を見つけた場合は、間違いとみなし、上記の緑ハイライトのように修正して問題ないと考えます。
△ サンドバッグを殴ったり蹴る
△ 見たり聞いて調べる
△ 右手を上げたり下げる
技術ドキュメントでは、次のような修正が行われると思います。
△ このボタンで、フロント パネルを開いたり閉じます。
○ このボタンで、フロント パネルを開いたり閉じたりします。
ただ、個人的に「たり」は冗長に感じられるため、連結できる類似動作であれば、普通は次のように処理します (二重丸は、個人的に好きな処理というだけで、権威のある方が推奨しているわけではありません)。
◎ このボタンで、フロント パネルを開閉します。
さて、「たり」の単独使用は、どんな場面で許容されるのでしょうか。ほとんどの辞書では、ある動作や状態を例示して類推を示す副助詞的な単独使用 (「したりする」、「したりしたら」など) を許容しているようです。副助詞的使用の例を次に示します。
○ 過剰摂取により、めまいが生じたりすることがあります。
これは確かに許容されていますが、前述のように私は「たり」があまり好きではないので、次のように副助詞「など」で代用しています。
◎ 過剰摂取により、めまいなどが生じることがあります。
では、複数の動作/状態を含む文章で単独使用が許容されるのは、どのような場合でしょうか。個人的には、最初の動作/状態とその後に続く動作/状態との類似性や関連性が低いときに、許容されると感じています。つまり、類似性が低すぎて、初期の「たり」が類推とみなされ、そこで完結してもいいように感じられる場合です。
次に、3 つの動作が含まれる文章を示します。
○ このダイアログから、フロント パネルを開いたり、閉じたり、装置を停止したりできます。
ここで、最初の 2 つの動作は連結して表現できる動作なので、とりあえずまとめてしまいます。
○ このダイアログから、フロント パネルを開閉したり、装置を停止したりできます。
さらに、最後の動作/状態の類似性が低く見えるので、2 番目の「たり」を削除し、「すること」を使用して体言化します。私は、2 番目の「たり」を削除するためには、体言化して独立性を高めることが必須であるように思えます。この処理を推奨するクライアントも多く存在します。
○ このダイアログから、フロント パネルを開閉したり、装置を停止することができます。
ここまで書いておいてちゃぶ台をひっくり返すようですが、私が実際に最も使用するのは次の文章です。
◎ このダイアログで、フロント パネルの開閉、装置の停止などの操作を実行できます。
ま、色々な意見があるとおもいますが、クライアントの比率として次のように感じます。
10%: 「たり」は必ず組み合わせれ
40%: 「たり」の組合せ使用は避けて、別の表現を使用せい
40%: 「たり」を使用する場合は「~たり、~することが」を使用してーな
10%: どうでもいい。そもそも訳文のチェックなんてしねーから
あっちょんぶりけつ
2 件のコメント:
初めまして。米国在住の同業者です。「たり」に関するコメント拝見させてもらいました。クライアント提供のスタイルガイドでもばらつきがあるので一貫性がない表現でもあるかと思います。最近支給されるスタイルガイドは多様で、読むだけでも結構な時間がかかるものもあります。ホトト・・・
確かに、クライアントごとにバラバラですね。
いろいろ書きましたが、もちろんクライアントの指示に合わせることが最優先ですね。
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